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従来,研究されてきた核種は,主として安定な原子核,およびその近傍の原子核であった。
しかし,近年の実験技術の進歩により,非常に不安定な原子核,すなわち,陽子数に比べて中性子数が非常に多い中性子過剰核の研究が進められている。
これらの原子核では,安定核,あるいは,その近傍の核とは異なる性質をもつ。その中でも最も顕著な例が魔法数の消失である。
原子核の殻構造は,陽子数・中性子数がある特定の数(2, 8, 20, 50, 82, 126)のとき結合エネルギーが著しく大きくなる現象として現れる。しかし,中性子過剰核においては,中性子数 8 及び 20 が魔法数になっていない。
我々は,原子核内における一粒子エネルギーの変化から「なぜそのような性質が現れるのか」「そのような性質が現れる機構は何か」を明らかにし,また,魔法数の消失が陽子と中性子の系の集団的運動に及ぼす影響を示してきた。この研究の成果は,超新星爆発時に起こる重元素合成を信頼性高く理論的に予言する上で重要な指針を与えている。
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